第四章 シクロヘキサン

ねらい

この章ではまずシクロプロパンからシクロペンタンまでの炭素数の少ないシクロアルカンの配座解析を学ぶ。対応するアルカンに比べると、環構造をとるためシクロアルカンでは結合のまわりの回転に対する自由度が著しく減少しこれらの環では反転は起こっても分子の形にさほど影響を与えないことを理解する。

すべての∠C-C-Cが正四面体角を保つシクロヘキサンにおいては、2つのいす形と2つの舟形の2つの構造をもち、しかも舟形を介して2つのいす形の間の反転が可能であることを学ぶ。重要な天然有機化合物等にはシクロヘキサン環類似構造をとるものが多く、特に重点的に掘り下げる。

シクロヘキサンの立体化学が置換基の導入によって、どのように拡張されるかを、メチルおよびジメチルシクロヘキサンの配座解析を通じて理解する。

四章の目標

本章を終えると、以下のことができるようになる。

  1. いす形および舟形シクロヘキサンの分子模型を正しくつくり、ブタン・ゴーシュ相互作用に基づいて両者の安定性を比較する。
  2. いす形シクロヘキサンの反転と、それに伴うアキシアルーエカトリアル相互変換を見分ける。
  3. メチル置換シクロヘキサンの配座解析をエカトリアル配置の安定性と1,3-ジアキシアル相互作用によって説明する。

新しい用語と概念

Summary

S4.1 いす形および舟形シクロヘキサン

  • いす形 : 6個のブタン・ゴーシュ形単位を含む。
  • 舟形 : 4個のブタン・ゴーシュ形単位、2個のブタン・重なり形単位を含む。

S4.2 シクロヘキサンの反転

  • 反転 : いす形シクロヘキサンが舟形シクロヘキサンの1つを経由して、もう一つのいす形に相互変換する。

図4.1

S4.3 アキシアル、エカトリアル

  • アキシアル : 分子面に対して垂直な方向。反転によってエカトリアル方向になる。
  • エカトリアル : 分子面に対してほぼ平行な方向、反転によってアキシアル方向となる。

図4.3

S4.4 1,3-ジアキシアル相互作用

いす形シクロヘキサンのC1およびC3(または同等の関係にある2個の炭素原子)上のアキシアル置換基の間の立体反発。


図4.4