第二章 エタンとブタン

ねらい

この章ではまずエタンを例にして、単結合のまわりの回転によって分子の形、また分子のエネルギーがどのように変化するかを学ぶ。

結合の回転と分子構造、分子エネルギーの関係の研究を配座解析という。配座解析を有効に行なうのに便利なNewman投影図を駆使してプロパン、ブタン、さらには多置換エタンの配座解析を試みる。また順位規則をやや拡張して、配座異性体を命名する。

二章の目標

本章を終えると、以下のことができるようになる。

  1. 任意の配座におけるエタン誘導体のNewman投影図を書く。
  2. エタンのC-C結合の回転に伴う分子のエネルギー変化をねじれ角一エネルギー図にまとめる(エタンの配座解析)。
  3. 重なり形配座とねじれ形配座を区別する。
  4. ブタンの配座解析によって、ねじれ形の中にあるアンチ形、ゴーシュ形の2つの安定な配座異性体について区別する。
  5. 順位規則に基づく,配座異性体のより一般的な命名法を理解する。

新しい用語と概念

以下の用語の半分以上の内容が頭に浮かぶようであれば、直ちに問題に取り組んでよい。

問題へ

そうでない場合は、身に付いていない用語をクリックして見直してから問題に取り組もう。

木びき台画法 くさび画法 Newman投影図
配座解析 ねじれ角一エネルギー図 コンホマー(配座異性体)
重なり形 ねじれ形 アンチ形
ゴーシュ形 ねじれ角 ペリプラナー
クリナル    

Summary

S2.1 配座解析

  • 配座解析 : 単結合の回転に伴う分子の構造変化(当然ポテンシャルエネルギーや化学反応性の変化を伴う)の解明。
  • ねじれ角-エネルギー図 : 横軸にねじれ角、縦軸に分子の(ポテンシャル)エネルギーをプロットした図。簡単な分子の配座解析に不可欠。

S2.2 重なり形とねじれ形


図2.1
  • 重なり形 : ねじれ角が0~±120°であるエタン誘導体の配座(図2.1 3)。
  • ねじれ形 : ねじれ角が60°~±120°であるエタン誘導体の配座(図2.1 4)。

S2.3 ゴーシュ形とアンチ形


図2.2
  • ゴーシュ形 : ねじれ角が60°である1,2-二置換エタンの配座(図2.2 9)。
  • アンチ形(トランス形) : ねじれ角が180°である1,2-二置換エタンの配座(図2.2 10)。

S2.4 自由エネルギー差と異性体の組成の対応表をまとめた

ΔG = -2.303 RT log K

K (298K) 2 3 4 5 10 20 100 1000 10000
安定な形の存在比(%) 67 75 80 83 91 95 99 99.9 99.99
-DG [kJ/mol] 1.71 2.72 3.43 3.97 5.85 7.52 11.3 17.1 23.0

S2.5 単結合のまわりの立体化学命名法

ねじれ角θ名称記号
0 ± 30° (±)シンペリブラナー synperiplanar (±)sp
+30° ~ +90° +シンクリナル synclinal +sc
+90° ~ +150° +アンチクリナル anticlinal +ac
+150° ~ +180° (+)アンチペリプラナー antiperiplanar (+)ap
-30° ~ -90° -シンクリナル synclinal -sc
-90° ~ -150° -アンチクリナル anticlinal -ac
-150° ~ -180° (-)アンチペリプラナー antiperiplanar (-)ap