第三章 2-ブテン

ねらい

この章ではジクロロエチレン、フマル酸とマイレン酸を例にして、二重結合まわりの回転が束縛されているため(エネルギー障壁が高いため)、幾何異性シス、トランス異性が起こることを学ぶ。

シス・トランスの別があいまいな複雑な化合物に対して適用できる表示についても学ぶ。

さらに進んだ考え方として、これまで幾何異性と配座異性の関係は、二重結合のまわりの回転と、単結合のまわりの回転との関係とみなされてきたが、むしろ回転の障壁の大きさに関連づけられるべきであることを学ぶ。

ジエン類における-トランスおよび-シス異性についても学ぶ。

三章の目標

本章を終えると、以下のことができるようになる。

  1. 二重結合を含む化合物についてシス、トランス異性の有無を判定し、もしある場合はシス体とトランス体を区別する。
  2. シス、トランス異性の概念を炭素-炭素二重結合を持つ化合物以外の二重結合を持つ化合物に拡張する。
  3. 順位規則に基づく表示によって複雑な幾何異性体を命名する。
  4. ジエンのコンホマーを区別する。

新しい用語と概念

Summary

S3.1 シス・トランス異性(幾何異性)

  • シス形 : 2つの同種リガンドが二重結合に関して同じ側にあるもの。
  • トランス形 : 2つの同種リガンドが二重結合に関して反対側にあるもの。

図3.1

S3.2 命名法

  • (またはseqcis)配置 : 優先順位の高いリガンドが二重結合に関して同じ側。
  • (またはseqtrans)配置 : 優先順位の高いリガンドが二重結合に関して反対側。

図3.2

S3.3 コンホマーと配置異性体

  • コンホマー : 100 kJ/mol以下のエネルギーで隔てられた立体異性体。
  • 配置異性体 : 100 kJ/mol以上のエネルギーで隔てられた立体異性体。