2.3 ブタンの配座解析

2.3 ブタンの配座解析

プロパンはエタンと大同小異の二面角―エネルギー図を与えたのに対して、ブタンの配座解析を中央の2個の炭素原子間の結合のまわりの回転について行なうと、やや異なる結果が得られる。2つのCH3-C結合がつくる角を分子のポテンシャルエネルギーに対してプロットすると図2.2.3が得られる。エタンの場合と異なり、エネルギー極大のコンホマーが2種(AとC)、エネルギー極小のコンホマーが2種(BとD)ある。


図2.2.3 ブタンのねじれ角エネルギー図

それぞれの構造に対応するNewman投影図を図2.2.4-5~8に示す。 エタンの場合には、重なり形とねじれ形でコンホマーを区別することができたが、ブタンの場合にはそれでは不足である。重なり形のうちφ=0°(A)に対応する5シス(cis)形、ねじれ形のうちφ=60°(B)に対応する6ゴーシュ(gauche)形、φ=180°(D)に対応する8アンチ(anti)形またはトランス(trans)形という。ゴーシュおよびアンチの名称は特に用いられることが多い。2つのメチル基の距離が近いので57より、68よりもいくらか高いエネルギーを持っている。もっと複雑なエタン誘導体で、ゴーシュとアンチでは表現できない場合については後に述べる。


図2.2.4

Newman投影図の書き方は必ずしも一義的ではなく、分子全体を軸に対して任意の角度回転させても、あるいは分子の後方から前方の壁に投影させてもかまわない。同じことが木びき台図形についてもいえる。