ねらい
この章では、まず分子の構造は普通教科書で見られる平面構造式では十分に表現できない場合があること、それは分子の中で原子が3次元的に配列されているためであることを理解する。
有機化合物の立体構造は炭素の混成原子軌道の形と性質によって著しく制約を受けている。ここでは、分子の形に特に関係深いsp3およびsp2混成軌道の形を学ぶ。
分子の形を調べるには模型の助けをかりるのが便利である。市販の分子模型をその特徴に従って分類する。
化合物の命名にはいろいろの方法があるように、有機化合物の立体化学の命名法(表記法)も一通りではない。特に順位規則に基づいた命名法は、化合物命名法でいえば系統的命名法に対応し、広く利用できるのでその基本を学ぶ。
新しい用語と概念
以下の用語の半分以上の内容が頭に浮かぶようであれば、直ちに問題に取り組んでよい。
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▶ 第一章 解説
Summary
S1.1 分子式、示性式、構造式
- 分子式 : 1分子中に含まれる原子の種類と数を示す。
- 示性式 : 分子内に含まれる官能基(多重結合を含む)をわかりやすく書き出した式。
- 構造式 : 価標を用いて分子内での原子の結合順序を明示した式。
1.1 異性・異性体へ
S1.2 炭素原子の混成
- sp3混成 : 正四面体構造(例: メタン、エタン)
- sp2混成 : 正三角形構造(例: エチレン、ベンゼン)
- sp混成 : 直線構造(例: アセチレン)
1.3 炭素原子の原子軌道・軌道の混成へ
1.4 多重結合へ
S1.3 分子模型の種類
分子模型は次の3種に大別される。
- 空間充てん(space filling)型 (例:Stuart模型)
- 骨格(skeletal)型 (例:Dreiding模型)
- 球と棒(ball and stick)型 (例:HGS模型)
1.5 分子模型と分子の形へ
S1.4 順位規則
- 問題とする中心原子に直接結合している原子(第1原子)の質量数の大きいリガンドが優先順位が高い。
- 直接結合している原子の比較で優劣がつかない場合は、中心原子から結合2本をへだてた原子(第二原子:1つとはかぎらない)の比較で判定する。優劣がつかない場合は以下第三、第四原子と順次比較する。
- 多重結合に対してはレプリカ原子を補う。すなわち多重結合の多重度だけの同種原子と結合しているものとみなす。
S1.5 代表的リガンドの優先順位(低位→高位)
この順位は置換によって容易に変動するので注意を要する。たとえばメチルCH3-はエチル-CH2CH3より低位であるが、フルオロメチル-CH2Fはエチルより高位である。
図1.1
1.6 立体構造の表示法へ